東京高等裁判所 昭和46年(ネ)1112号 判決
以上の事実関係からみると、本件物件はもと高橋善作の所有であつたが、昭和三九年二月一六日被控訴人が買受け、引渡を了して所有権を取得したものであつて、これより後、本件物件をその所有者でない高橋ミユキの所有であるとしてなされた有体動産の競売により稲垣欣弘が競落し、その代金を支払つていわゆる占有改定の方法による引渡を受けても、同人はこれにより所有権を取得するものではない。控訴人は本件物件を競落し、即時取得したと主張したと主張するけれども、前示乙第一号証、原審証人高橋善作の証言によれば、「本件物件は右競落前から善作ミユキの居住する家屋のある前記宅地内に庭園の一部として据付け又は植付けられたまま競売により稲垣欣弘が競落して代金支払後も、善作らによる従前の占有状態に変更なく、その占有者善作らは爾後これを競落人たる稲垣欣弘のため占有すべき旨意思表示しただけのものに過ぎなかつたこと」が認められるから、本件物件に対する稲垣の占有取得はいわゆる占有改定の方法によるものであつて、このような方法により占有を取得しただけでは、同人は本件物件につき民法第一九二条に基づき所有権を取得しうべきものではなかつたといわなければならない。
(中西 松永 長利)